皆さん、こんにちは旅ねこです。
今回はオーバーブッキングについて、何故こういったことが起きるのか解説していきたいと思います。
『オーバーブッキング』って言葉は耳にする機会がたまにあるんじゃないかと思いますが、その意味をご存じでしょうか?
学生時代の後輩と以前話してた時に、「こないだブッキングがあったんですわ!」って云われて、ビックリしたんですが、旅行業界に身を置いている人以外にとっては、滅多に聞かない言葉で意味がイマイチよく分からない言葉になるんですが、英語のBook=予約って意味で、オーバーブッキングは予約がオーバーしている状態っていう意味になるんですね。
その後輩はオーバーを除いたブッキングって言葉自体が何か予約が重複した様な響きを感じ取ったみたいで、ブックの意味を深く考えずにブッキングっていう言葉だけが記憶に刻まれてたんでしょう。
では何故、こんなことが起こるのか、各業界共通の闇と個々の業界ごとの違いを見ていきましょう。
飛行機編
最も頻繁にニュースになるのは飛行機でのオーバーブッキングでしょう。
参考に以下のJALの運送約款の抜粋をご覧下さい。
一番下の、ご搭乗いただけない場合の欄に、オーバーブッキングによって座席を提供できない場合の記載がありますね。
この様に、航空会社はモントリオール条約を基本に、各航空会社が補償内容を定めています。
では、何故座席数を越えて予約を受け付けるのかと言うと、これはホテルもバスも同様なのですが以下の事象が最も大きな共通の理由として挙げられます。
予約していても、実際の利用日までにキャンセルが相当数出てくるため。
結局、キャンセルとの戦いがこの旅行関連業界の永遠のテーマとなっている訳です。
申し込んだら100%キャンセル料にしちゃえばいいんじゃない?
ってなると、リスク高すぎますよね💦
なもんで、最近ではAIを駆使してかなり高精度のキャンセル率を割り出して予約受付を行っていますが、それでも100%の正答率にはならず、次の便に乗ってもらえるお客さんを探す光景が空港で見受けられる訳です。
それでも、航空会社の予約システムは多くのお金を投資して、最先端の技術で無駄無く座席を販売する様になっていますので、一昔前と比較すると相当精度は上がっている様です。
ホテル編
ホテルも又航空会社以上に数が多く、オーバーブッキングが起こりやすい業種になります。
旅ねこも一度京都の隣県の某リゾートホテルで、ロビーにずらっと従業員さんたちが並んでチェックインに訪れたお客さんたちにそれぞれ状況を説明して、他のホテルへの振り替えをお願いしている風景を見たことがありますが、グレードの高い他のホテルへの振り替えると云っても、立地含めていろんな条件を加味してここを選択したお客さんたちがそうそう他のホテルへ再移動してくれる訳も無く、かなり苦労されてた様に見受けられました。
そもそも、ホテルの場合は近隣施設も繁忙期はおんなじなんで、中々他のホテルも空いておらず移動手段の確保も含めて労力が掛かるため、ホテル側でも繁忙期は航空会社以上に神経を使って予約を受ける数を絞り込んでいます。
最近は部屋タイプまで指定される個人のお客さんが増えてきてますんで、オーバーブックするとかなり難しい状況に陥る事が多いんじゃないでしょうか。
因みにホテルによっては『支配人枠』みたいなのを設けて、部屋の設備が故障したり、急遽常連のVIPがやって来た場合に備えて幾つかの部屋を取り置きしているところも多くあります。
私も学生時代の後輩が大手ホテルチェーンの本社勤務していたんで、コロナ禍前は困った時には後輩に頼み込んで、数名以内の小人数であればその枠に予約を押し込んでもらって助けてもらっていました。
貸切バス編
貸切バスも同様にキャンセルが出ますので、それを見込んで予約を受けるんですが、航空会社やホテルとは少し事情が異なります。
貸切バスの場合、十数年前までであれば仮に50台保有の会社で繁忙期は大体1日当たり150台近い予約を受け付けていました。
これはホテルや航空会社では考えられないオーバーぶりですが、勿論予約台帳を管理する人の感覚で、最終的には予約が落ち着くと考えてここまで予約を受けることになります。
何故こんなことが可能かと云いますと、貸切バスは一日1台フルに利用する仕事ばかりじゃないからなんですね。
例を挙げますと、下の様な運行が実際に10年ちょっと前なら普通にありました。
運行時間 | 運行区間 |
7:30~7:50 | 学校から市内研修施設送り |
8:30~9:30 | ホテルから京都駅送り |
11:00~12:00 | 伊丹空港からホテル送り |
13:30~17:30 | 京都駅から市内観光、ホテルまで |
19:30~21:00 | ホテルから夜間観光、ホテルまで |
つまり、1台が一日複数運行する事になります。
そして、このバスの利用時間をお客さんが確定してくれるのが結構間際になっちゃうんですよね。
お客さん直接予約だと割と早めに正確な時間が見えてくるんですけど、旅行会社が間に入っていていい加減な営業担当者だと中々正確なスケジュールがバス会社に届かなくて四苦八苦することになります。
団体旅行は行程の確定まで二転三転あって、一日観光が半日になったり自由行動に切り替わったり、人数減で6台予定が5台になったり(学校でもクラス減や希望コースの人数の確定が旅行間際になってたり)と、受けてた車両数や利用時間が短縮されたりと、かなり実際の予約台数や利用時間数が減っていきます。
更にもう一つ、人数が変わってくると、大型バスは11列(正座席45席)と12列(正座席49席)の2タイプが大半を占めますが、人数が増えて12列じゃないと乗り切りませんとか直前で旅行会社から言ってくる場合です。
台数的に足りれば問題無いんですが、繁忙期は修学旅行だと12列が多く必要になるため、12列のバスが足りなくなる時が出てきます。
このため、バス会社は動きや人数が読みやすい例年の利用団体や旅行会社からの予約を優先して予約を受けていくのですが、更にバス会社は特殊事情があるんですね。
代車(傭車)というのが貸切バス業界では認められていて、自社で受けた仕事を他社に回すことが出来るんですね。
これって業種によっては談合に当たるため出来ませんが、貸切バス業界では台帳を預かる担当者同士が繁忙期に台帳合わせっていって、普通に『3台、12:00に京都駅で終わる仕事があってその後の仕事が19:00から21:00の京都市内観光しかないんだけど、組み合う仕事ある?』『うちは13:30に京都駅受けの仕事があるけど、それ渡すから17:30終わりの仕事があるんで、19:00からの3台の観光頂戴』『これがうちが請け負ってるバス代なんでこれでいいかな?』ってな感じでやり取りが行われます。
※もし最近法律が変わってたらゴメンなさい。
つまり、一日50台あっても、実際に受けられる仕事は1台で最大4~5本の場合があるので、3倍近い受注件数でも最終的にはパズルを組みあわせるがごとく収まっていく訳です。
そして、これが崩れるとオーバーブッキングが起こってしまう訳です。
貸切バスの場合、多くが例年の仕事の占める割合が多いため、台帳担当者の長年の経験を基にした職人技で割とうまくはまっていきますが、やはり旅行会社のミスなどで、2日前とかに出発時間を30分早めてほしいって言ってきたりすると、その時点で50台全ての運行計画を一からやり直すことになる場合があるため、トラブルが発生することになります。
たかが30分って思うかも知れませんが、その出発が30分早まる(到着が遅くなる)事によって、前日の車庫入りから翌日の出庫までの時間が法定時間を切っちゃうと、運転手さんが運転することが出来ない訳です。そうなると、バスだけじゃなく運転手さんを入れ替えなきゃならないんですが、1台で遠方の東京へ行く仕事があったとして、入社1年目の運転手さんがそこへ代わりに入れるかっていうと、行ったことないとこへいきなり道の下調べもしてないのにいきなり行けないよってなる訳です。
そうなったら大変、経験のある運転手さんをそっちに回して、こっちの仕事に経験の浅い運転手さんを回すと、普段運転してるタイプのバスと違うんで運転に不安がある上、仕事終わりが遅くて今度は翌日入ってた仕事が朝早くて法定時間に抵触しちゃう、とか、たった一つの仕事の狂いが全ての仕事の見直しに直結しちゃうんですよね。
貸切バスって意外と奥が深くて、バスと運転手さんの組み合わせパズル、そしてバスガイドさんの組み合わせまで含めるとめちゃくちゃ難解なパズルになって来るんです。
バスガイドさんも経験によって案内可能な地域が違ってきますし、運転手さんとの相性で避けなければいけない組み合わせが存在します。
業界目線の記事は、他にはこちらになります。
まとめ
結局席や部屋、バスを今より大幅に高い料金で販売出来れば怒らない事ではあるんですけど、誰も変えない金額では一部のお金持ちだけしか利用出来なくなるため、こういったぎりぎりの職人技で無駄なく販売していくことになっているのが実情です。
旅行関連の3業種のオーバーブッキングについて解説してきましたが、どうしてこの様な事が起きるのかと、各業種の違いがお判りいただけたでしょうか?
2024年4月、貸切バスの法律が変わって、今より運転手さんの車庫入りから出庫までの休憩時間がより多く必要になることになりますので、貸切バスは料金アップと繁忙期の予約が難しくなる流れが出てきます。
宿泊業界のキャンセル料収受の取り組みや東京以外の宿泊業が今少し宿泊料金アップ出来ると宿泊業界の魅力が増すでしょうから、業界を挙げて取り組んでいけるといいですね。
いつになく文字だらけの記事になっちゃいましたが、今回は業界ねこの視点から記事を書いてみました。
記事の内容は随時アップデートしていければいいなと思っていますので、最新業界情報と違ってるよってとこがあればご指摘下さい。
それでは、又次の記事でお会いしましょう(@^^)/
コメント