修学旅行、高すぎじゃない!?
そんな声が保護者の方を中心によく聞こえてくるんで、実際に修学旅行を担当したことのある旅ねこが、何が高いのか?どこが儲けてるのか?どうしたら安く出来るのか?
ぜ~んぶ項目ごとに説明していきますね♪
京都発、東京2泊3日をモデルに解説
修学旅行は自治体ごと・地域ごと・学校ごとに予算や主目的が違っているため、一律では判断できませんので、一般的な公立中学校の5月の修学旅行をモデルに検証していきたいと思います。東京発京都行も似た様なもんです。
費用項目:30名1 ×4クラス=生徒120名 先生11名 添乗員3名で計算
京都市内を基点にしてみましたんで上記条件を元に費用を見ていきましょう。
京都市の修学旅行規定上限費用
57,300円。但し、沖縄に関しては航空機利用の規定で60,300円
高校や私学はそれぞれ独自の基準を設けてやってますんで、一律上限はありません。
項目 | 単価 | 1人単価 | |
⓵ | 学校~京都駅往復貸切バス | 52,800×3台=158,400円 | 1,209円 |
⓶ | 京都-東京:生徒(運賃半額)/先生(運賃3割引) | 正規料金:運賃8,360円指定席5,810円 | 9,990円/11,660円 |
⓷ | 新横浜ー京都 :生徒(運賃半額)/先生(運賃3割引) | 正規料金:運賃8,030円指定席5,470円 | 9,480円/11,090円 |
⓸ | 貸切バス(2日目はホテル送りのみ)1,3日バスガイド付 | 206,480円×4台=825,920円 | 6,304円 |
⓹ | 有料道路 臨海副都心-入谷、葛西-入谷、向島-みなとみらいと往復回送 | 12,580円×4台=50,320円 | 384円 |
⓺ | 駐車場代 | 18,000円×4台=72,000円 | 549円 |
⓻ | 安めの都内ホテル(1泊2食) | ※宴会場使うのでこれでも格安 | 13,750円 |
⓼ | 安めの都内ホテル(1泊朝食) | 10,450円 | |
⓽ | 1日目昼食 | 持参弁当 | 0円 |
⓾ | 1日目夕食 | ホテル宴会場利用宿泊費に含む | 0円 |
⑪ | 2日目昼食 | 各自 | 0円 |
⑫ | 2日目夕食 | TDLミールクーポン配布 | 1,000円 |
⑬ | 3日目昼食 | 中華街 | 1,650円 |
⑭ | 観光(国会・お台場) | 無料 | |
⑮ | 都内自主研修 | 交通費各自 | |
⑯ | 東京ディズニーランド | 中学校団体料金 | 4,500円 |
⑰ | 横浜自主研修 | 交通費各自 | |
⑱ | 添乗員費用 3名を生徒120名割 | 390,000円 | 3,250円 |
⑲ | 保険(修学旅行向け3種概算) | 700円 | |
⑳ | コロナキャンセル対応保険概算 | 1,200円 | |
㉑ | 企画料金 旅行会社や地域によってまちまちです。 | 1320円くらいと見ましょう | —–円 |
㉒ | 合計 | 64,416円 | |
※集約列車利用時 | -5,640円 | ||
4クラスで3台分乗時(バス、有料道路、駐車場) | -1576円、-96円、-137円 | ||
ディズニーのミールクーポンを各自夕食に変更 | -1,000円 | ||
削れる部分を削った最終料金 | 55,967円 |
貸切バスは最低料金の下限運賃で計算、新幹線以外は概算ですが通常これくらい掛かります。只、この金額では京都市の修学旅行の規定上限金額を越えてしまいますので、新幹線の集約列車を利用する事になります。
集約列車とは、一部の列車を指定席特急料金を中学校だと半額になる制度で、事前に申請して申し込みがその列車の座席数を越えると抽選で外れてしまうと別日程に振られちゃう、当たればオトク外れりゃ学校行事の組み直しが必要になる、費用を安くあげたい学校が利用する制度です。
※集約列車を利用する学校は公立中学校全体で1割もありません。前々年の12月1日発表なんですが、それまで待って宿を予約しようとすると、結局集約列車を利用しない学校に先に条件のいい宿を取られちゃうからです。宿の予約は基本、集約列車予約確定後の受け付けになります。
更にバスをクラス単位では無く現地でも3台にしてクラスを解体してバス代を安くあげるのが京都流です。京都市は1クラス30人制で、バス1台当たりこの人数で乗車するとかなり割高になるのでこれはしょうがないでしょう。そして、ディズニーランドの夕食は各自支払い、ここまでやって57,300円をクリアです(笑)まあ、不登校なんかで来ない生徒もいるんで、実際には頭割り金額がもうちょっと上がって56,000円は確実に超えますんで、あまりにそういう生徒が多いと規定料金ぎりぎりにしとくのは怖いんですけどね。要は京都市以外の自治体の公立中学校は、正座席45名又は49名乗れるバスをクラス単位で貸し切ってゆったり利用してるんで、募集のツアーより贅沢な使い方をしてる訳です。
項目ごとの検証
⓵⓸貸切バス代は国交省で地域ごとに決められており最低運賃は割り込めませんので、シーズナリティや各旅行会社の仕入れ力などで若干は下げられますが限度があります。最大下がって1人2,000円でしょうか。実際にはピークの5月には先ず下がりませんが。
地方ごとに設定されている運賃。これは関東運輸局の運賃ですので、近畿は又若干違いますが参考までに。
⓶⓷新幹線は公示運賃ですので一切値下げ余地無しです。学生団体の運賃は決められておりパッケージ用の金額は適用不可です。パッケージ用の安い金額は確実に販売できる座席数をJRが考慮して、売れ残る予定の座席を旅行会社へ宿泊とセットにして金額を見えない形で販売するならこの安い金額で卸しますよっていう条件付き料金です。
JR東海 団体割引乗車券ページ(普通団体と違って、学生団体は割引率が高いため無料扱人数はありません)
⓹⓺有料道路・駐車場代:ここはそのまんま右から左へ、使った分を支払うだけ。
⓻⓼殆どのホテルは修学旅行料金というものを設定しています。ここの部分が一般の方には理解されない部分ですが、修学旅行では食事を大人数で一斉に摂る必要があったり、アレルギー対応がやたらと必要(昨今、好き嫌いかよってのまで含めると100人の生徒で20人くらい対応必要になってます)で莫大なエネルギーと費用が必要だったり、夜中に生徒が寝静まってから先生方の打ち合わせでその日の問題点や健康面、翌日の動きの再確認や修正点などを打ち合わせるための会議室の準備が必要だったりしますので、ホテル側もかなりの労力を消費しますので、個人向けに空室状況をみて料金変動させるようなことは無いんです。
※東京や京都のホテル(旅館)は、私達団体営業担当者が選ぶことはほぼ出来ません。各地域の手配センターに担当校の人数や立地や施設の希望を上げて、後は各支店から上がってきた手配依頼を期日まで貯めこんで各宿へ宿泊依頼を流すと、宿がその日に受け入れ可能な人数を基に取りたい学校を選んでいくことになります。売り手市場の繁忙期はこんなもんですから、予算に合わない高い宿しか空いて無かったり、受け入れ可能な宿が無いなんてことも起こりますので、その場合はどんどん希望地から遠い地域の宿を当たっていくか、学校にお願いして旅行日程を変更してもらうかになります。
⓽⑪昼食:ここは各自負担で費用を抑えます。
⓾夕食をホテルで摂ると高くつくんで都内の大規模レストランで摂ることも多かったんですが、年々そういった学生向けレストランが減って来てて、更にレストランだと人数は入ってもアレルギー対応を一切してくれない場合が多いんで、安全のためホテルでの夕食ってことになる場合が多くなってます。
⑫予算に余裕があれば、ミールクーポンを配ることによって「使わないともったいないから使おうっ」て気持ちにさせて、遊んでて夕食をとらない生徒を極力無くしたいっていうのが学校側の本音です。
⑬最終日の昼食:最後の日は集合に遅れて新幹線に乗り遅れると大変なことになるんで、お昼ご飯をフリーにせずに最悪、昼の集合に遅れても新幹線に間に合う様にバッファータイムとして全員での昼食を設定するケースが多くなっています。バス集合、即駅へ出発だと集合に遅れた時点でアウトですからね。
⑭⑮⑰観光はお金のかからないところや、自分たちで行きたいところへ公共交通機関を利用して行ってもらう事で費用も抑えられて自由度も確保できるので生徒・学校側共にwin win♪
⑯東京ディズニーランドはスクールスペシャルパスポートが最安値です♪
⑱添乗員:これが一番無駄な削れる費用なんですが、学校側としては逆に添乗員が多ければ多いほどいいというのが本音で、これが保護者と旅行会社と学校との最大の意見の相違点ですね。
夜の打ち合わせ時に主任添乗員は先生方との打ち合わせ、その間生徒が男女間で行き来が無い様に各フロアで添乗員が見張っててほしいっていうのが一番のポイントです。他にもバスごとにコース別に動く場合なんかに何かあったら不安だからってこともあり、添乗員の人数を求められます。しかし、旅行会社も地域によって修学旅行の時期は大体1,5ヶ月くらいの内に一斉に出てしまうんで、そもそも人数が足らないので、どうしても派遣会社に主任添乗員以外は頼らざるを得ません。酷い時には主任添乗員すら派遣会社に任せないと回らない時もありますし、派遣費用が深夜残業代まで含めると日当3万円くらい行きますんでバカになりません。
実際の見積もり時には、殆どの項目で旅行会社による金額差は無いんで、この添乗員費用を実際の見積り提出時には1,000円以下に抑えて安く出して受注を狙いに行きますが、その赤字分は㉑の企画料金で賄う事になります。
⑲保険は削る部分じゃないんで、どの旅行会社でも違いはせいぜい200円以内で補償内容の若干の差異です。安い保険は安い補償と思っておけばそう大きな間違いはありません。
⑳コロナに対応した保険はいくつか出ていますが、これはイレギュラーなものなので予算の許す限りはかけていきます。予算が無い自治体はここの費用も削って出発してました。
㉑企画料金は旅行会社の収入源です。暫定的に1320円としてみましたが、これは地域事情や各旅行会社によってまちまちですね。添乗員費用を仮に900円で見積もりを出すとすれば、企画料金と差引きしても1,000円以上のマイナスが出ますが(;^_^A。
結局、利益からこの分削られることになります。
以上が各項目ごとの解説となります。
隠れ原価
ここまで項目ごとに見てきましたが、これらはいわば販売額の内訳で、実際にはここまでで見えてこない原価があり、それが修学旅行の料金を押し上げている一因になっています。
下見費用
修学旅行では多くの地域で未だ下見が実施されています。これが実は大きな原価となっていて、最終的にここで出た赤字分を取り戻すべく企画料金などが高止まりする背景にあります。
下見っていうと先生方が行くだけと思われますが、大半の地域では旅行会社の担当者の同行を求められるんですね。しかも、先生方の下見代は市町村や学校経費で賄われますが、同行添乗員の費用は何故か旅行会社持ち。
そうなると、1泊2日で下見同行することによって、添乗員の交通費や宿泊費、食事代がまるまる赤字になる上、その間の営業活動も停止することになります。それらの原価は2日間で10万円を超える原価として、その修学旅行で取り返さな変えればいけない計算になるんですね。各施設への下見連絡さえ入れておけば、先生方だけで下見に行ってもらって問題無いんですが、ここが一番無駄を感じる部分ですね。
聞くところによると都立高校は下見禁止って話ですが、ホントにそうなら業者との癒着を無くす意味でも公立の中学高校全国一律そうしてもらいたいもんです。
企画書作成費用
そこまで大きな費用ではありませんが、公立中学校はSDGsと云いながら一方でやたらと分厚い企画書を10部~20部も要求してきます。印刷費用や紙代、それを作成する労力もバカにならず、営業時間を取られることに。高校や私学では生徒数は中学校の2倍前後なのに多くても10部まで、そんな資源の無駄は要求されないんで、ここも公立中学だけの慣例な気がします。
イレギュラー対応費用
⓻⓼⓾あたりでも言及しましたが、昨今アレルギー対応に相当なエネルギーを割く必要に迫られています。会社の慰安旅行なんかでは殆ど対応する必要のないアレルギー対応ですが、修学旅行ではどう考えてもアレルギーじゃない好き嫌いであったり、別メニューをホテル側で試行錯誤しながら提案してくれたメニューを見てから、最近大丈夫になったしやっぱりみんなと一緒の物を食べたいって子供が言ってるから結構ですとか、支離滅裂な申し出がいくつもあって、ホテルや飲食施設と我々旅行会社が振り回されているのが実情です。そんなこともあって、大手ホテルチェーンも7大アレルギー以外は対応不可だったり、アレルギーの別対応メニューはお1人様550円とか1100円頂きますってとこが増えてきています。又、熱を出した生徒のために1室余分に部屋を借りた場合に部屋代が発生する場合がありますが、学校側としては保護者へ言いづらいのか、企画書提出要件に保健室を無料で用意することって文面が入ってきたりしてますが、この場合は結局その原価を含めて計算することになります。
どこを削ると安くなるのか?
費用の多くを占める交通とホテルに関しては、残念ながら大人数故にオトクな料金で旅行に行っている個人向け料金とは違いますので、下見を添乗員同行では無く先生だけで行き、添乗員の人数を最低限の1名ないし2名で行くとそれなりの費用削減が可能になります。
只、貸切バスと宿泊施設に関しては、旅行会社が一社しかないエリアなんかでは高止まりしている可能性があるので、その場合には修学旅行代金が異常に高くなっている可能性としてはあります。
又都内のホテルは高いんで、浦安や幕張まで足を延ばすとかなり安くで宿泊することは可能です。
反対に東京方面から京都方面へ来る場合は、タクシー研修といって貸切タクシーを利用して京都市内を回るパターンも多くありますが、貸切バスより高くつくためそれを離れた立地の大津あたりのホテルで安くあげてタクシー代に回すような場合もあるかと思います。
で、結局儲かってるの?修学旅行の問題点・まとめ
JR:明らかに学生団体運賃は安いと思います。
航空会社:SE運賃と云われる修学旅行向け運賃があって、セール運賃と比べると高く設定されています。そこそこ儲かってるハズ。セール運賃が利用便で空席あったからって使うと、ペナルティで普通運賃取られます。
ホテル:設備的にくたびれたホテルが受け入れのメインなんで、それほど儲かってる訳では無いと思われますが、一般客に相手にされないそれなりのサイズのホテルや旅館にとっては有難いお客さんです。
テーマパークや観劇施設:主たるお客さんとして貴重な収益源。
食事施設:ケースバイケース。基本的には有難いハズ。
旅行会社:実は各社の修学旅行の利益率はある程度分かってますが、明らかに安売りしててシェアを取りに来てたところはコロナ禍で一部撤退し始めています。それ以外のところは個人や一般企業団体よりはかなり利益が薄いけど赤字じゃないってとこです。只、大手や準大手で修学旅行担当者が出世して社長に就任したって話は聞いたこと無いです(笑)ま、大体これでお判り頂けるでしょう。
個人旅行では貸切バスや添乗員、昼食代や入場・体験費用、保険代まで事細かに全て費用を出して計算する事ってあまり無くて、往復交通費と宿泊費だけで旅行費用いくらって考えますから、どうしても項目を知らされず総額だけ聞くと「えらい高いな」って思いますから、修学旅行が高いイメージはぬぐえませんよね。修学旅行が終わってから学校からざっくりとした明細を貰って初めて、ああ、これも入ってるしこれも付けてるんだってなるんでしょうかね。
このコロナ禍で各旅行会社の経営は厳しさを増して、私がいる京都では大手でも公立中学校の修学旅行から撤退する企業が複数出始めています。
これを機会に全国で公立中学校の修学旅行を無くしてくれると仕事が楽になっていいな~ってこっそり思ってるねこでした(笑)
業界目線からの記事は他にはこちら。
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